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2015年04月23日

【知道中国 1233回】 「糞穢壘々トシテ大道ニ狼藉タリ」(小室10)

<樋泉克夫愛知大学教授コラム>
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【知道中国 1233回】         一五・四・念二

 ――「糞穢壘々トシテ大道ニ狼藉タリ」(小室10)
 『第一遊清記』(小室信介 明治十八年 自由燈出版局)
 
 「支那ノ國情ニ通ゼザルノ日本人」が撒き散らす弊害は、遠く小室の時代には止まらず、現在にまで延々と続いている。ここで始末に困るのが、「支那ノ國情ニ通ゼザル」にもかかわらず、その自覚すらなく我こそ「支那ノ國情ニ通」じていると自任する方々だろう。さしずめ、かつて肩で風切って歩いていた支那通などは、その悪しき一例といえる。もちろん、「支那ノ國情ニ通ゼザル」ことの弊害を後世にもたらした夥しい数の官民双方の専門家や支那学者、国策策定に与った高級官僚、兵站もままならず敵の背後を等閑視したままに確たる勝算もなく広い大陸での戦争に突き進んでいった帝国陸軍作戦中枢(必ずしも「勝算」がなかったわけではないだろうが、それは妄想に起因する願望に過ぎなかった)、さらには有象無象のメディアなど(その悪しき典型が戦前も戦後も「朝日新聞」だ)――

 自ら思い込んでしまった“バーチャル中国”に、日本と日本人は何度煮え湯を飲まされたことか。いつになったら中国に対する幻想や陶酔から目覚め、等身大の中国とドライに真正面から、日本の立場で向き合うことができるようになるのか。

 「支那ノ國勢ノ日ニ蹙レルヿ今更ニ言フ迄モナシ」とする小室は、そのダメさ加減を、内外政に分けて語る。

 「内ニシテハ政令日ニ弊ヘ百官月ニ怠リ言路壅塞賄賂公行シテ人心離畔シ百姓怨ヲ積ム一朝事アラバ匪徒所在ニ蜂起シテ政令施ス所ナキニ至ラントスルノ勢有リ」

 ――国内をみれば、政治は荒廃するばかりで行われていない。官僚は政務を怠り、官民上下に意思疎通は見られない。賄賂は横行し、人民の怨嗟はいよいよ募る。不穏な情況が発生するや、直ちに匪賊が各地に蜂起し、政治は機能マヒに陥りかねない――

 以上の国内情況に続き、清国を取り巻く国際環境に言及する。原文は長文でもあり、紙幅の関係で聊か整理し、適宜原文を引用して小室の主張を見ておくこととしたい。

 ――いまやフランスという敵を前に清国の敗北は必至であり、その「禍ノ及ブ所測リ知ル可カラズ」。次に控えているのがロシアだ。清仏戦争敗北によって「北京城陥リ邊防人ナキノ日ニ至ラバ其ノ利爪ハ知ラズ」。いずれ「幾百里」をものともせずに侵略してくるだろう。イギリスもドイツも「其ノ表面親睦ノ色ヲ現スモ」、真意は判ったものではない。しかもドイツとフランスは永遠の仇敵だが、目下のところは「隠善」として同一歩調を取っている。イギリスはフランスが宣戦布告前に発した台湾封鎖令を「承認シテ之ヲ拒ムヿナシ」。以上から、イギリスとドイツの真意は明かだろう。「支那國ノ形勢ハ目下恰モ俎上ノ肉ニシテ飢虎其ノ四邊ニ咆哮スルモノヽ如シ」。

 これを要するに「佛人先ズ進ンデ調理割烹ノ任ニ當レルモノ」。次いで「飢虎」であるイギリス、ドイツ、ロシアが清国という「俎上ノ肉」をむしゃぶり尽くすことになる。フランス人が先ず木に攀じ登り、枝にたわわに実った果実を「打墜ス各國筐ヲ提ヘテ之ヲ拾ハントスルモノナリ」。

 では、隣国がこのように亡国の瀬戸際に立たされている時、「日本人ハ何如ガ處シテ可ナルカ」と自問し、小室は「蓋シ未ダ明言シ能ハザルモノアル可シ英雄豪傑ノ士ニシテ始メテ能ク其ノ方ヲ知ルベキノミ」と結ぶ。結論的にいうなら、小室にも明確な方策は思い浮かばなかった――

 小室の説く清国をめぐる内外情勢が現在の習近平政権下の中国にそのまま当て嵌るわけはないが、3月半ばのイギリスによるアジア投資銀行(AIIB)参加表明以後のフランスやドイツの素早い動きを見せつけられると、「飢虎」の伝統は21世紀初頭の現在にも受け継がれているようにも思える。日本の急務は、やはり「英雄豪傑ノ士」の鍛造だろうか。《QED》

posted by 渡邊 at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 考えてみた
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