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2011年02月01日

とりあえず、昔の海賊は「立派」としておこう

 我が家の近くに幼稚園があり、運動会が近くなると練習の音が聞こえてくる。その中で、毎年必ず流れるのが「かいぞく体操」なる曲。「俺たちゃ海賊!世界で一番強い!宝を探して七つの海をすすめ…」と、曲に合わせ、習った振り付けで踊る子供は見ていて楽しいのだが…続いて入るフレーズが、「立派な海賊になるには、力が強くなくちゃ、アカン…ガッツ!」。
 おーっと!立派な海賊?ソマリアの海賊が国際問題になっているのに、幼児期、海賊に立派な印象を刷り込んで大丈夫か?と、ここで妙に教育論者思考がはたらいた。 しかし、海賊=Pirates(パイレーツ)の名は、米国メジャーリーグをはじめ、結構使われており、やはり海賊は立派にしておかなければならない事情があったのだと、勝手に結論付けた。(海賊体操は、関係ないが)

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フランシス・ドレーク
エリザベスT世より私掠許可を受け取り、英国を潤わせた。
海賊→私掠船船長→受勲→海軍提督とスペイン無敵艦隊を壊滅させた「立派な海賊」だ。
キャラクター等に使われる「エル・ドラゴ」は彼の異名。


 本来、海賊は悪党であり、国家は自国の軍事力で海賊を制圧し、他国に対しても威厳を保つものであるが、スペインとポルトガルが世界を二分した大航海時代から、覇権が英国に移行する16世紀後半、スペインの力をそぐために英国は、海賊へ「私掠免許」なるものを大量発行し最大限利用した。私掠免許とは、個人船舶所有者が、許可料を政府に支払い、戦争に参加して拿捕した相手の財産を受け取るというもの。要するに、敵国の船を襲い掠奪する許可を与えるもので、更には掠奪品を国家が元締めとして、定めた割合で分配するシステムができ、海賊に投資するに及ぶ。軍事的には傭兵にも似るが、私掠船は、フルコミッションのビジネスといえる。女王陛下公認の職業「海賊」はゲリラ戦の如く、カリブ海で暴れ、疲弊していくスペインに代わり英国は世界覇権の座に着いた。ただ、1588年のアルマダ海戦でスペイン無敵艦隊を破って英国が主導権を獲ったイメージがあるが、それ以降も、スペインは制海権を維持しており、実際には、年数を掛けてスペインを衰弱させ、覇権交代を実現させた。

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1502年の世界地図。
スペインとポルトガルが、勝手に世界を線引きをして二分している。
欧州の中華思想か。


 一方、海洋国家ポルトガルは、大西洋、インド洋、東南アジアの制海権を得て、日本付近にまで及んでいた。種子島の鉄砲伝来がその例だ。そのため、東アジアでは、スペインよりもポルトガルの方が、交易などで縁が深い。そこへ、英国と同様に海洋へ進出するオランダが台頭。オランダもカリブ海でスペインを襲い、東南アジアでは、ポルトガルから掠奪をし、植民地(蘭領インドシナ等)を拡大した。オランダそのものが海賊といえる。また、台湾からオランダを駆逐した鄭成功もいわば海賊だ。海賊が歴史を作っていったのである。第二次世界大戦により、東南アジア諸国が解放されたが、植民地支配をした英・仏・蘭は、海賊によって列強の地位を得たわけだ。やはり彼らは、海賊を英雄にせざるを得ない。

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週刊朝日百科日本の歴史より資料引用
天正6年(1578年)木津川沖海戦の想像図。
織田信長が、鉄甲船を用いて、手を焼いた村上水軍(毛利水軍)を破った。
鉄甲船は、ポルトガル人が驚愕し本国に報告した。


 さて、日本には、「水軍」という存在がある。戦国後期、織田信長を悩ませた村上水軍(毛利水軍)は有名だ。水軍の来歴は、平安時代ごろから登場した海賊衆が、水上兵力となっていった。壇ノ浦の合戦や元寇で活躍し、戦国時代に入り、大名の家臣にもなった。
 生粋の海賊としては、倭寇がいる。前期は、日本人といわれたが、後期は混成だったという。戦国後期に海賊取締り強化が為され倭寇は消滅したが、もし、信長が、明征服を実行したら、倭寇は、取締りの対象から、英国のように私掠船団として重用されたかもしれない。
 歴史をみると悪党も一定の力を超えたら出世のチャンスがあったということだ。しかし、支配者となった者が悪党であると、一番、たちが悪い。

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タグ:海賊
posted by 渡邊 at 14:34| Comment(3) | TrackBack(0) | 歴史を眺めて
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