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2011年04月27日

「天叢雲」に抱くロマン

 ギリシャ神話に出てくる、ヒュドラーは九つの首を持つ猛毒を持った蛇。一つある不死身の首を討ち取らない限り、いくら斬っても新しい首が生えてくる厄介者。ヘラクレスは、苦戦しながら、不死の頭を岩の下敷きにして退治した。戦いの最中、刺客として送られた蟹はヘラクレスに近付いたが、激しく戦うヘラクレスはそれに気付かないまま、蟹を踏んでしまった。
 最後は、それぞれ星座になるロマンある話だが、戦い方はヘラクレスが、ヒュドラーの首を刎ね、すぐに生えてこないよう助手が、松明で切り口を焼く。吹き付けられる毒に注意を払いながら、これを繰り返すから、ヒュドラーは、激しく動いて攻撃してくる感じではないようだ。例えるなら、時折、ガスを噴出するモグラ叩きに熱中して、近付いてきた蟹を踏んだ情景が浮かぶ。全体として滑稽だが、とりわけ蟹が一番惨めだ。

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【ヒュドラー】もっと蛇らしい画もあるが、ダックスフントにも似る。
wikipediaより

 日本神話でも同じような設定で、建速須佐之男命(素戔男尊)による八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)退治がある。こちらは、頭が八つの大蛇だが、その大きさは八つの峰八つの谷にまたがり、体には苔や松が生え、頭は叢雲が掛かっているというから、のぞみ16両編成でもイトミミズのようなものだろう。
 そこで、この大蛇に酒を飲ませ、酔って寝たところを切り刻む、いわゆる騙し討ちで退治する。
須佐之男自身、泣き叫べば、大海原が荒れ狂う怪物性を持っているが、不要な労力を使わないために合理的な方法をとったということか。それにしても、この大蛇を十拳剣(とっかのつるぎ)で切り刻んだ須佐之男は、一体どれだけの体躯だったのだろう。

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【建速須佐之男命】

 八俣遠呂智を切り刻み、尾に差し掛かったところで十拳剣が、何かにあたり刃が毀れた。取り出してみれば、霊験荒高な剣だった。この霊剣「天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)」を天照大神へ献上した。この剣は、天孫降臨の際、邇邇芸命(ニニギノミコト)が携行し、後に伊勢神宮へ奉納されたが、日本武尊が、東征に用い「草薙の剣」と名を変え、熱田神宮に祀られた。
 ヤマタノオロチのサイズを思うと、何となく小さいような気もするが、更に現実的な展開となり、草薙の剣は、668年、新羅僧による盗難騒動に遭い、更に20世紀、大東亜戦争中、空襲を避ける理由で長野県へ疎開している。櫃が大きく大変だったそうだが、それでも対比のサイズとして、段々とヤマタノオロチのサイズが小さくなっていく思いだ。

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【ヤマタノオロチのモニュメント】島根県多々良製鋼博物館

そこで、人は考える。ヤマタノオロチは、出雲を流れる斐伊川などの八つの河川ではないか?と。
ちなみに福井には九頭竜川があるが、これは名前からヒュドラーかも。日本海側の河川は、山間部から海岸までの距離が短く、急流になりやすい。九頭竜川の氾濫は、現在の土木技術で治めることができた。つまり、歴史的には、最近のことである。記紀の時代、斐伊川の氾濫による被害や治水の儀式が、娘を喰らうヤマタノオロチとして表現されたものとする。水源は、まさに天叢雲かかる船通山系。
 記述に合致する大きさだ。荒っぽい須佐之男は、治水を完成させたということか?または、戦を平定したともいわれる。
 こうなると、実に現実的になってくる。歴史考古学なら、足がかりが見えてきて面白くなってくるのだが、どうせなら、もっと夢を膨らませてみたい。神話に出てくる人間味あふれる神々は、実は、現代の文化を越える、霊的な分野を科学にした先史文明が存在した・・・とか。

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【草薙剣が祀られる熱田神宮社殿】


AFPBB News>>>>>>>
国が不安定になると、その歴史も疎かになり、いつしか消失することになる。
時間の縦軸を大切にする世界観が望まれる。
タグ:出雲
posted by 渡邊 at 23:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 考えてみた
この記事へのコメント
ヒュドラーとかヤマタノオロチとかメデューサとか、頭たくさんの怪物いいですよね。

阿修羅もかっこいいし。

このヒュドラー、ユーモラスでウィキの画より好きなのですが、どこに載ってたか覚えてらっしゃいます?

本を書いているので、使えるものなら使いたいのですが。

覚えてたら教えてください。
お願いします。
Posted by るい at 2014年03月31日 14:59
るい様

コメント有難うございます。
このヒュドラーは、ウィキペヂアコモンズより引用しています。
この説明では、著作権は消失しているようですが、よくわかりませんので「引用」として用いてます。
それにしてもこのヒュドラー、顔が猿というか人というか、目と目があったら首を刎ねるのに躊躇しますね。

http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hydra_04.jpg
Posted by 管理人 at 2014年04月07日 10:31
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