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2011年04月30日

台湾への贖罪は、戦後にあり

 大東亜戦争で米国と正面から戦った日本は、敗戦したとはいえ、連合国にとって恐れる存在だったのだろうか。日本を骨抜きにするため、戦前体制を「悪」として作り上げ、そこへ戦争に協力しなかった日本人も敗戦の責任から逃れるため、同様に戦前を「悪」とすることで、利害が一致した。
その結果、自主防衛ができず、根拠なく周辺国家を善良な国民とする奇妙な憲法ができ、自虐史観教育が行われたことで、日本人は、誤った認識を植え付けられ今日も尾を引いている。
ちなみに開戦前当時、昭和天皇は開戦を望まれておらず、閣僚も懸命に戦争回避を模索したが、避けることができなかったわけであり、必ずしも戦争に協力しなかった者が平和主義者だったとは限らない。

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【烏山頭ダム】八田ダムとも呼ばれる。荒れた平野を緑一面にした。

 このような戦後の歴史認識から生じる現実的なずれを感じさせるのが台湾だ。戦前を全て悪とする贖罪意識は、日本人として戦った台湾人が、そのことに誇りを持つことに理解できない。日本が全て正しいというのは驕りになるが、八田與一技師はじめ後藤新平等々、戦前日本人は、今なお台湾人から尊敬の念が止まない。

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【全ての台湾人から愛される、八田與一技師墓前の銅像】

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【ダムの恩恵を受けた平野部地図】

 日本が、台湾に対し贖罪すべきことは、戦前ではなく戦後である。日本は、サンフランシスコ条約に基き台湾を放棄した。ところが、よりによってマッカーサーは蒋介石に台湾を管理させた。これが、台湾人が言う、「米国は、広島と長崎に原爆を落とし、台湾には『蒋介石』という石を落とした」というもの。原爆が一瞬で多くの人命を奪い、後遺症という禍根を残したが、蒋介石は、228事件で台湾人の大量虐殺、世界に類をみない長期の戒厳令を施行しての白色テロと、台湾人を恐怖のどん底に突き落とした。敗戦したことで、やむないところはあるが、日本人として戦った台湾人を蒋介石に渡ってしまったことに対し、日本政府は、台湾人への謝罪をすべきであった。
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【228事件の様子を描いた記録画】

 今日の台湾は、それらの弾圧に屈しなかった人達によって民主国家となっているが、しかし、日本が戦後の憲法に悩まされているのと同様に台湾は蒋介石が持ち込んだ中華民国憲法に悩まされている。
そして、中国の台頭は、米国ですら、中国を刺激しないような姿勢をとり、日本もそれに歩調をあわせ、台湾の憲法改正を阻んでいる。以降も日本の外交は常に中国の顔色を気にして台湾に対し、実に冷たい。
大陸をも領土とする中華民国憲法下にある台湾は、逆に中華人民共和国が、台湾領有を主張する道具になる。また、共産党一党独裁国家、中国にとって、自らを中国の代表と称する国民党は、国家転覆を謀る「国賊」として成敗出来る対象であって欲しいから、台湾が憲法を変えて欲しくないわけだ。

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【破壊を防ぐため回収された蒋介石の銅像たち】


 李登輝元総統が苦労の末、万年国会議員を廃し、国民党軍を国軍とし、国民選出の総統(大統領)となった。この選挙の前に中国は、台湾海峡へ威嚇のためミサイルを撃ち込んだが、台湾人は恫喝に屈することなく李登輝氏を選んだ。李登輝総統(当時)は、対中国問題について「二国間の特殊な関係」と、明確に中国とは、別の国であることを世界に発信している。その後、独立を訴える民進党の陳水偏氏が総統となった。ところが、8年を経て、台湾人は、国民党の馬英九氏を選んだ。民進党に絶望感があったとはいえ、よりによって中国を「大陸」といって統一を目指す人物が選んでしまったところは、民主化による平和の享受が、国民党の弾圧を忘れさせてしまったのだろうか。

 2012年、台湾では、総統(大統領)選が行われる。国民党現職の馬英九総統と蔡英文民進党主席との一騎打ちで現在、互角といわれている。この流れに日本は、無策でよいのか、考えてみたい。
 政治的な考えとして、仮に台湾が、中国に併呑されるようなことになれば、台湾海峡は、中国の内海となり、日本にとっては、今までのような航行ができなくなる。日本のシーレーン確保で台湾は重要な位置にある。安全保障も同様で、強力な台湾軍が中国軍となって日本へ向けられる。それを日本が見過ごせるだろうか。

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【日本人の訪台を歓迎する旧日本海軍の皆さん】

 もう一点、台湾事情を考察したい。中国との統一を望む台湾人は少数派だが、独立派が必ずしも多いとはいえず、大半が、現状維持である。
その理由は、中国が軍事行動に出ることへの懸念があるからだ。つまり、大半は独立を望んでいるが、それを選挙に反映できない状態にあるということである。
 ちなみに台湾の独立は、前述、中華民国憲法、つまり中華民国からの独立である。国家としての体制は、十分に整っており、領土を大陸から切り離した台湾憲法を作り台湾共和国(仮称)を表明すれば、独立できるのだが、そこで最大の障害になるのが、中国の軍事行動だ。本当なら、それを許さない国際世論形成が必要だが、中国は、あらゆる方法で、それを封殺できるよう年数をかけて準備してきている。

 そのうえ、日本は憲法9条および長年の平和ボケで、すぐさま集団的自衛権が行使できる体制にない。つまり、日本が台湾の独立を促したことで、中国が攻めてきた場合、台湾を助けることができない。したがって日本の立場は、残念ながら、いかに台湾が現状を保てるようにするかが現実的な路線だった。

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【台中市宝覚寺慰霊碑前、三万三千余柱の英霊が祀られている】

 しかし、中国の台頭に、もう、そのようなことは言っていられなくなってきたのも事実である。「日本は、安全保障のために憲法を改正する意思がある」「アジアでの軍事バランスに日本もその責務を果たす意思がある」という今後の方針を打ち出したら、どうであろう。
当然、今までの感覚で「それは、緊張を生じさせ、甚だ、好ましくない方向へ行く」という人もいるだろう。しかし、何もせず、ただ、現状を眺めているだけでは、問題はより深刻になってくる。
「一国の思うようにはならない」という姿勢を日本が示し、対等な交渉に持っていける体制を作らなければ、アジアの安定もなければ、日本自体の安定もない。日本が日本を変える姿勢を示せば、自ずと台湾もまた、民族自決権を持つ真の独立国家に近付く選挙になると考える。
戦後の仕打ちにも拘らず、日本へ一番の親近感を持つ台湾。そんな台湾への贖罪意識を持つならばこそ、それに応えるべく、日本がアジアの安定に寄与できる力を持つことではないだろうか。


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タグ:台湾
posted by 渡邊 at 01:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 考えてみた
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